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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』48

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-23 10:29:57

久実二十二歳 赤坂二十八歳

赤坂side

二十歳になるまで手を出さないで待とうと決めて、やっと二十歳になった久実。それなのに恋をしないと言い出した。

久実を傷つけた男をどれほど憎んだことか。

無理やり迫ろうと思ったこともあるが、絶対に俺は久実を手に入れたかったから、久実の心の傷が癒えるまで気長に待つことにした。

あれから二年。

久実は短大を卒業して就職をした。

病気のことも理解してくれる会社に入り、事務職をして頑張っている。

俺はCOLORとして相変わらず仕事をさせてもらっていて、お陰様で忙しい毎日を送っていた。

そろそろ、限界が来そうで怖い。

久実のことが好きすぎて夜な夜な考えてしまうのだ。

仕事をしていても気になるし、この気持ちをどうすればいいのかわからなくなっていた。

休みがあれば久実を家に呼び出して他愛のない会話をしているのが定番だ。

社会人になり、ぐっと大人っぽくなって色気も出てきた。

今日は日帰り温泉に二人で行く約束をしている。

暑い夏だからこそ風呂に行こうと意味のわからない誘い方をしたが、久実はOKしてくれた。

俺に対してはまったく警戒心がないらしい。

俺も立派な男なのだが。

個室がある宿で昼食と夕食を摂って帰って来るプランだ。そのまま泊まってしまいたいところだが、明日は朝早くから仕事があるから無理。

久実も有給を取ることができて、このデートが叶った。俺はデートだと思っているが久実はただの遊びだと思っているだろう。

車で待ち合わせの駅まで迎えに行くと、麦わら帽子を被って白いワンピースのスカートをゆらゆらと揺らしながら立っている久実がいた。

「…………俺の愛しい女」

何度か迫ろうとしたことはあったが、まだ傷は癒えてないらしく強引に迫ることが出来なかった。

今日こそはといつも思いながら時だけが流れていく。

俺の車に気がついた久実が駆け足で近づいてくる。

ドアを開けて乗り込んでくると優しい香りがした。

「おはよう」

「おはようございます」

車を走らせる。

ラジオからは軽快な音楽が流れていた。

平日の朝から久実と過ごせるのは、とても幸せだ。

「仕事どうだ?」

「うん、皆さん優しいしいい職場だよ。定期健診で休むこともあるけど快く休ませてくれるし」

「そうか。安心した」

旅館について早速ランチが用意された。

和室で心地よい風が入り込んでくる。

緑の揺れる音が
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